2023 年 12 月 15 日 声明文 大学私物化に立ちはだかる人垣をつくるために 2023 年 12 月 13 日、自由民主党の議員・閣僚の未曾有の裏金疑惑が明らかになるなか、参議院本会議で国立大学法人法「改正」案が自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の賛成により可決されました。 この法案は、国立大学法人に運営方針会議という最高意思決定機関を設けさせることで、時の政権が大学トップの人事や運営方針に介入できるようにするものです。政財界の意を体した学外者が大学の予算・決算を決定し、学長の選考や解任に口を出すこともできる仕組みとなっています。 2020 年に安倍晋三政権が検察トップの人事を左右できる法案を提出した際には「 # 検察庁法改正案に抗議します」というツイートをきっかけとして批判の声が高まり、法案の成立をふせぎました。この時にかろうじて検察の独立性を守ったからこそ、いま、わたしたちの目の前で東京地検特捜部による政界捜査が展開されているともいえます。 検察の独立性やメディアの独立性、中央銀行(日銀)の独立性と並んで、学術界の独立性は、民主主義を健全に保つために必要不可欠なものです。それぞれが独自の物差しにしたがって権力をチェックする機能が失われたならば、独裁国家となってしまうからです。 今回の法案は、日本学術会議へのバッシングと相まって学術界の独立性を脅かし、ひいては民主主義の解体をおし進めるものです。さらに、学生にとってキャンパス空間の持つ意味を無視して大学の土地を私企業に貸し与え、短期的な利益を見込める研究だけを「振興」することで学生の学びの選択肢を狭め、政財界による大学私物化を深刻化するものです。なにもかも経済的価値に還元する新自由主義の原理にしたがって「稼げる大学」とする試みは研究や教育を劣化させ、未来世代に大きなツケを回すことでしょう。 わたしたち大学横断ネットは、法案の成立を阻むことができなかったことに深い失意の念を抱いています。法律の改正を必要とする立法事実が明らかではないにもかかわらず、政府は法案の立案過程にかかわる公文書を断片的にしか提出せず、答弁も二転三転しました。それにもかかわらず、参議院文教科学委員会の委員長(自由民主党)は職権で委員会の開催を決定し、採決を強行しました。肝心な疑問には一切答えずに
「最近の大学、なんだかおかしくない?」と感じる人たちが相互に知り合う中で誕生したネットワークです。2022年の国際卓越研究大学法案(「稼げる大学」)反対を契機として立ち上げ、その後も今日の大学政策にかかわる発信を続けています。これまで大学教員が中心ですが、大学生や市民との公共的な議論の場として輪を広げていきたいと考えています。
呼びかけ人(12月14日現在)は次の通りです。
石原俊(明治学院大学)、指宿昭一(弁護士)、遠藤泰弘(松山大学)、隠岐さや香(東京大学)、河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、光本滋(北海道大学)、吉原ゆかり(筑波大学)、山田幸司(北海道大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学)