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「稼げる大学」はどこへ行く? ― アカデミック・キャピタリズム再考(2024.4.29開催)


日時
:2024年4月29日(月)13時30分~16時30分(開場は13:00)

会場:東京大学 赤門総合研究棟 A200講義室

申込:4月28日(日)までにこちらよりお申込みください。

※対面参加者は申込無しで来ることも可能ですが、急な会場・スケジュール変更等もありますので、できるだけ事前申し込みをお願いします。


司会進行
 隠岐さや香(東京大学/科学史/大学横断ネット呼びかけ人)
 米田俊彦(お茶の水女子大学[名誉]/教育史/大学横断ネット呼びかけ人)

第Ⅰ部 シンポジウム

・パネリスト
 本田由紀(東京大学/教育社会学)「国立大学法人法の変更と国立大学の危機」
 堀口悟郎(岡山大学/憲法学)「国立大学の統治構造」
 田中智之(京都薬科大学/日本科学振興協会理事/薬理学)「『選択と集中』の何が成果か?」
・コメンテイター
 光本滋(北海道大学/高等教育/大学横断ネット呼びかけ人) 

第Ⅱ部 それぞれの現場からの問題提起

趣旨説明:

 国際卓越研究大学法案の策定過程で「稼げる大学」という言葉が登場したときに、多くの大学関係者が戸惑いを感じた。その後の経過が示しているのは、この「稼げる大学」という発想が相当に深い根を持っていることである。

知識を市民が求める公共財とみなして知の自由な流通を求める「知と学問の公的体制」から、知識をいわば私有財産とみなして知識を提供した企業や、研究を請け負った大学の利益を優先する「知と学問のアカデミック・キャピタリズム*的な体制」への転換が1980年代からアメリカやイギリスなどで生じていた。

日本では21世紀初頭に小泉純一郎内閣の下での国立大学法人化により政府は設置者として国立大学の経費負担義務を免れ、運営費交付金の財政措置等を通じて大学を統治することが可能となり、アカデミック・キャピタリズム(大学資本主義)への道が開かれた。国際卓越研究大学の登場はその総決算であると同時に、「稼げる大学」へのの転換をさらに加速しようとするものである。

「稼げる大学」はどこに向かおうとしているのか?それは本当に研究力の向上や「イノベーション」につながるものか?与党政治家と官僚や特定の大企業が癒着しながら経済を支配するクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)と結びついて研究不正を蔓延させ、研究力を低下させ、大学の私物化を推進するだけではないか?

今日の大学をめぐる状況があまりにも深刻であるだけに、できるかぎり根底的。原理的な次元にさかのぼって学術的に考える機会としたい。

*「アカデミック・キャピタリズム」という概念については、成定薰「アカデミック・キャピタリズムの進展――知と学問の体制変換」(https://home.hiroshima-u.ac.jp/nkaoru/TwoRegimes.html)、スローター、G. ローズ(成定薰監訳)『アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー 市場、国家、高等教育』(法政大学出版局、2012年[原著は2004年])を参照。

主催:隠岐さや香研究室+大学横断ネット

連絡先:大学横断ネット(稼げる大学法の廃止を求める大学横断ネットワーク)

E-mail:trans.university.network@gmail.com

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